会社売却では、契約が終わればすべての責任から解放されるとは限りません。売却後に、税務、労務、債務、契約、許認可などの問題が見つかった場合、売り手が補償責任を問われることがあります。
この論点で最近注目されているのが、表明保証保険です。2026年9月には、中小規模のM&Aで表明保証保険を使えるか、売り手の責任をどこまで残すべきかを扱う記事が複数公開されています。
表明保証とは何か
表明保証とは、売り手が「この会社について、契約時点でこの内容は正しい」と買い手に約束する条項です。たとえば、税金の滞納がない、簿外債務を把握していない、重要な契約違反がない、許認可に問題がない、といった内容が対象になります。
買い手は、売却後に問題が出たときに備えたいと考えます。一方で売り手は、会社を売った後まで長く責任を残したくありません。このズレが、最終契約の交渉で大きな論点になります。
表明保証保険が話題になる理由
表明保証保険は、表明保証違反による損害を保険でカバーする仕組みです。売り手にとっては、売却後の補償責任を軽くできる可能性があります。買い手にとっては、売り手に資力がない場合でも保険会社から回収できる可能性があります。
ただし、保険は万能ではありません。公開されている解説では、保険を使えるかどうかは、最終交渉の段階ではなくDDの設計段階で決まると説明されています。すでに分かっている問題、価格調整で処理すべき問題、将来の業績リスクなどは、保険の対象外になりやすい点にも注意が必要です。
小規模な会社売却で確認したいこと
休眠会社や小規模法人の売却では、表明保証保険を使う前に、まず契約条件そのものを確認することが現実的です。
- どの事項について表明保証するのか
- 補償責任の上限額はいくらか
- 責任が残る期間は何か月か
- 税務、労務、社会保険、許認可は別扱いか
- 代金の一部を後払い・留保する条件があるか
- 既に分かっている問題を開示資料に書けているか
- DDで見つかった問題を誰がどう処理するか
特に、未申告、税金滞納、未払い残業代、許認可の不備、契約名義の問題は、あとから争いになりやすい項目です。会社を売る前に買い手リスクを確認する理由やIT負債とデジタル権限は会社売却前に棚卸しするの内容ともつながります。
「問題がない会社」より「説明できる会社」
売り手にとって大切なのは、問題をゼロに見せることではありません。むしろ、分かっているリスクを整理し、買い手に説明できる状態にしておくことです。
たとえば、過去に申告が遅れたことがある、口座が休眠状態になっている、契約書が一部見つからない、といった事情があるなら、隠すより先に整理する方が安全です。表明保証は「知らなかった」では済まない場面があるため、曖昧な点は専門家に確認し、開示できる資料としてまとめておく必要があります。
簡易査定の前にできる準備
このHPの簡易査定では、設立年数、法人種別、決算・申告状況、債務、法人口座の有無を確認します。表明保証の観点でも、これらは最初に整理すべき情報です。
売却後の責任をできるだけ残したくない場合は、査定前に次の資料を確認しておくと相談が進めやすくなります。
- 登記簿
- 定款
- 直近の決算書・申告書
- 納税状況が分かる資料
- 借入・未払いの一覧
- 契約書や許認可証
- Webサイト、SNS、ドメインなどの管理情報
表明保証保険を使うかどうかは、案件規模、DDの内容、保険料、契約条件によって変わります。小規模な会社売却では、保険よりも「責任の上限」「期間」「開示資料」を丁寧に決める方が現実的な場合もあります。最終判断は、弁護士やM&A専門家に確認してください。