会社の営業を止めた後も、社長が運転資金を貸したり、維持費を個人で立て替えたりした記録が残ることがあります。売却を考えたとき、「銀行から借りていないので債務なし」と説明する前に、決算書の役員借入金も確認しましょう。

2026年10月18日には税理士法人クレフティが役員借入金の解消方法とM&Aでの扱いを解説し、同月5日更新の神戸みらい法律会計事務所の解説でも、役員との貸し借りを契約前に確認する重要性が示されています。

役員借入金が残っているだけで、売却できないと決まるわけではありません。ただし、買取可否や条件を検討するには、お金を貸した人、残高の根拠、売却時の扱いを説明できることが大切です。この記事では、株式会社の株式譲渡を想定し、相談前に整理したい5項目を紹介します。情報の確認日は2026年10月25日です。

1.会社に貸したのは誰か

役員借入金は、会社が役員から借りているお金を指します。会社の帳簿では負債、貸した役員から見ると返してもらう権利です。会社が役員へ貸している「役員貸付金」とは方向が逆なので、科目名と資金の動きを確認してください。

古い会社では、実際に資金を出したのが前代表者や親族で、現在の社長とは別の人ということもあります。株主と貸主も同じとは限りません。相談メモには、帳簿上の相手方と実際に入金した人を書き、異なる場合はその理由を確認します。株式の売却条件に合意しただけで、別の貸主の権利まで処理できるとは考えないようにしましょう。

2.いつ時点で、いくら残っているか

まず直近の決算書と勘定科目内訳明細書を確認します。そこから相談日までに追加の入金や返済があれば、会社の総勘定元帳や通帳の記録と照らし合わせます。

休眠中も家賃や会計費用を個人が支払っていれば、期末から残高が動いている可能性があります。「前の決算ではいくら」「その後の増減はいくら」「現在確認できる残高はいくら」と分けておくと、同じ数字で話を進めやすくなります。資料が合わない部分は、推測で埋めず未確認として残します。

書面が見つからないことだけで、貸し借りがなかったとは判断できません。手元の借用書、送金記録、返済の履歴を集め、誰に何を確認すればよいかもメモしておきましょう。

3.何のために発生したお金か

同じ科目にまとめられていても、運転資金としての貸付け、経費の立替え、未払いの役員報酬などでは確認すべき内容が異なります。入金や支出ごとに、日付、目的、金額、根拠資料を整理してください。

たとえば、会社への振込と、社長個人が支払った請求書は別々に保管します。役員報酬の未払いが混ざっていそうなら、給与台帳や過去の会計処理も税理士に確認します。売却前に科目を一括で振り替えるより、何に由来する残高なのかを確かめることが先です。

4.返済を希望する時期と資金の見込み

株式を売却して株主が変わっても、会社の役員借入金は、それだけで消えるものではありません。また、買い手が株主になったことだけで、買い手個人に返済義務が移るわけでもありません。

貸主として売却前の返済を希望するのか、決済時の扱いを相談したいのか、希望を整理します。そのうえで、会社の預金、今後必要な維持費、税金や他の支払いを確認しましょう。会社の残高をそのまま全額返済に回せるとは限りません。

条件を決める際は、返す人、受け取る人、金額、日付、資金の出所を一つずつ確認します。資金不足なら、その事実を先に伝え、買い手や専門家と扱いを検討します。返済、債権の譲渡、残す場合の条件などは、必要な合意と税務確認を経て決める事項です。

5.提示された売却価格に何が含まれるか

「会社の買取額」という説明だけでは、株式の代金と役員借入金の扱いが読み取れないことがあります。見積もりを受けたら、株式譲渡価格と、会社からの返済予定額や債権譲渡の対価を区別して確認してください。

残高があるからといって、その全額が株式代金に上乗せされるとは限りません。会社の評価と貸付金の処理を一緒に検討した提案もあります。残高を返してもらえると思っていたのに、契約では放棄が前提だった、という食い違いを防ぐため、提案の前提を書面で確かめましょう。

残高を消す判断は、相談前に急がない

売りやすくするつもりで返済を受けたり、債権を放棄したりすると、会社の資金や税務に影響します。債権放棄では債務免除益などの論点があり、赤字だから税負担が生じないとも断定できません。国税不服審判所には、債務免除益をどの事業年度に計上するかが争われた裁決事例もあります。処理方法だけでなく、合意や通知の時期も専門家に確認してください。

初回相談では、5項目を完璧に埋める必要はありません。「残高は確認できるが内訳が不明」といった状態でも、そのまま伝えることが確認の入口になります。

当サイトの簡易査定では、役員借入金も会社の債務として把握したうえで、状況に合う選択肢を選んでください。迷う場合はLINE相談で内訳を伝えられます。診断だけで返済方法や税務は確定しません。通常の相談資料はLINE相談前に準備したい情報、買取判断の全体像は会社買取の査定ポイントも参考にしてください。

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